マロニエ交通 株式会社 関 喜一 社長


バス運行業
重要性が高まる「身近な足」

さまざまなタイプのバスを保有するマロニエ交通株式会社は、
小回りの良さを生かしてきめ細かな生活者の移動手段を提供する。
急速に進む高齢化社会の中、その重要性はますます高まっている。


profile

昭和34年(1959年)栃木県那須烏山市生まれ。
烏山高校卒業後、烏山信用金庫に入社。
21年間勤務し経営のノウハウを学ぶ。
平成10年、マロニエ交通株式会社設立と同時に代表取締役社長に就任。


金融マンからバス運行事業へ転身
関 喜一社長
関 喜一 社長

 関社長は、烏山高校を卒業した後、地元の烏山信用金庫に就職し、21年間金融マンとしての道を歩んだ。マロニエ交通株式会社を立ち上げたのは、平成10年のこと。奥さんの実家がレンタカー会社「下野レンタリース」を経営しており、法律の規制緩和でバス運行事業の免許が取得しやすくなったため、貸切バス(一般貸切旅客自動車運送事業)の分野へと事業拡大を図った。
 当時、サラリーマンとしてそれなりに順調な地位を築いていただけに、商売をしたいという強い思いはそれほどではなかったという。しかし、一方で金融マンとしては「事業を継承していく重要性も感じていた」とも創業当時の思いを語る。
 金融機関に勤めていた経験は事業にいかんなく発揮された。「経営のノウハウはある程度思い描けていたのではないかと思います。特に烏山信用金庫の初代理事長だった束原清一氏には、経営の何たるかをみっちりと教えていただきました。同じ脱サラでも、こうした点では大変恵まれた立場にあったのではないでしょうか」と創業当初を振り返る。
 運送業は車両という動くものが資産になる。事故を起こしてしまった場合はその資産も瞬時になくなってしまう。その意味で自己資本を膨らませていくことが難しい事業だ。金融機関からの資金調達が厳しく、燃料などの外的な要素に大きく左右される。加えて競争が激しく、単価は毎年のように下がっている。このような環境の中で事業の拡大を続けていくのは困難を極めるが、同社は創意工夫でこれまでの難局を乗り切ってきた。


冠婚葬祭などきめ細かな需要に対応

 バス運行事業といえば、まずは観光を思い浮かべがちだが、マロニエ交通株式会社の売上の中で、観光の分野は約1割にとどまっている。観光シーズンは11月半ばでおおむね終了するのが一般的で、これに頼り過ぎると繁忙期に集中して仕事をこなさなければならない上、長距離を走るため安全面や人員体制にも無理がでることになる。
 「冠婚葬祭や事業所・学校関係の送迎などにお応えすることに重点を置いています。単価は低いのですが、年間を通して安定しているのが強みです」と関社長は語る。他にもスポーツ大会の遠征、子ども会の旅行、社員旅行、イベント大会へのピストン輸送などきめ細かな要請に応えてきた。「私どものような小さな会社にも、大手ができない仕事が必ずあるはずです」と語る。
 事業所などに繰り返し利用してもらうためには、信頼関係が何よりも重要になる。本日、明日というような急な依頼にも臨機応変に対応する。キャンセル料は取らないなど、栃木県をエリアとし、地元に根差した〝地域密着〟の営業を心がけている。また、「マロニエ交通に依頼すれば対応できる」という体制づくりに取り組んでいる。
 さらに小回りのきく同社ならではの特性を生かした独自のサービスにも精力的に取り組む。車いすの乗降に対応したリフトバスは、県内の同業者に先駆けて導入した。配備した当初はまだ珍しく利用も多くはなかったが、高齢化社会が進行するにつれ、年ごとに使われる機会が増えてきた。
 車いすの高齢者が出歩く姿が珍しくなくなった今、施設や個人からの高齢者送迎の要請が多くなり、今後もますますこの傾向は強まっていくだろうという。リフトバスばかりでなく、大型、中型、小型とバスの車種を豊富にそろえ、需要に応じて対応できるように体制を整えている。
 数年前、創業以来初めての大きな経営の危機を経験した。営業体制に穴が空き顧客を大きく減らす事態となったのだ。売上は大きくダウンし、会社の存続さえ危うい事態となった。これを克服するため、なお一層の地域密着を進め必死で新たな取引先を開拓した。努力が実り、一時離れたお客様も戻ってきて何とか乗り切ることができた。
 「誠意を持って営業を続ければ必ずお客様は評価してくれると確信しました。経営者として、自ら会社の隅々まで目配りすることが必要なことだと痛感しました」と関社長は語る。


安全な運行を最優先事項として徹底
栃木SCの選手たちの移動に活躍する「チームバス」を提供
栃木SCの選手たちの移動に活躍する「チームバス」を
提供

 バス運行事業にとって「安全」は最大のセールスポイントであり義務でもある。
 平成24年4月、関越自動車道で発生した高速ツアーバスの大きな事故はまだ記憶に新しいが、この事故をきっかけにバス利用者の安全に対する目は一層厳しくなってきた。「お客様を安全に輸送することは基本中の基本で当たり前のことです。しかし、常にその基本に戻ることこそ重要です」。
 マロニエ交通は輸送安全マネジメントの取り組みとして「輸送の安全に関する基本的な方針」を定め、実践に努めている。「バス協会や陸運支局の指導に基づき、輸送の安全の徹底を図っています。要は決められたことを着実に実行すること。弊社では運行はもちろん、車両整備など業務全般にわたって実行しています」と語る。
 同社では協力企業との相互扶助により、豊かなサービスの提供と向上を図ることを企業理念に掲げている。特に重視するのは「メリットの尊重」と「共存共栄」で、この理念は社会貢献活動に生きている。
 プロサッカーチーム栃木SCの試合がホームグラウンドの栃木県グリーンスタジアムで行われる際、駐車場からスタジアムまで、観客のピストン輸送をボランティアで取り組んだ。
 これが縁となって同チームの「チームバス」を依頼されることになった。車体に栃木SCのロゴとチームカラーをペイントしたバスが、全国各地への選手たちの移動に活躍している。「栃木県で営業させていただいている企業として、今後も地元のプロチームを支えていきたいと思っています」。
 また、東日本大震災の復興作業に従事するボランティアを県内から現地まで運ぶ足としても、同社のバスが活用されている。当初は炊き出しや片付け作業の応援だったボランティアも、最近は買い物やイベント開催など、地域振興を目指したものへ変わってきているという。
 関社長自身もボランティアとして、これまで5回ほど被災地に出向き、泥出し作業などに携わった。「決して仕事を得ようとしてやっているわけではないのですが、さまざまな人たちとの交流の機会が増えて、結果的に事業につながっている面もありますね。つまるところ経営も人と人とのつながりなのだとつくづく思います」と、関社長は信頼関係の重要性を語った。



マロニエ交通株式会社
〒321-0951 栃木県宇都宮市越戸4-1-26
TEL 028-689-1661 FAX 028-662-0627
URL http://www.maronie-t.co.jp

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