株式会社 エイシン 長島 久登 社長


不動産業
地場産業としての不動産業

「地元の街に根差し、なくてはならない企業になりたい」
というのが、株式会社エイシンが掲げる企業理念。
地域の将来的なまちづくりも視野に入れながら、お互いの顔が見える〝地場産業としての不動産業〟を目指す。


profile

昭和34年(1959年)栃木県さくら市生まれ。
宇都宮農業高校卒業後、同専攻科を修了。建築設計会社に勤務後、ワンルームマンションの販売、管理などを手がける。
28歳で父親が創業した株式会社エイシンに入社。
平成6年、代表取締役社長に就任。


農業のかたわら不動産業の資格を取得
長島 久登社長
長島 久登 社長

 株式会社エイシンは昭和50年に創業した。矢板市内の不動産会社に勤めていた長島社長の親が独立して、不動産の宅地開発を手がけたのがスタートだった。現在は不動産デベロッパー会社として、地元のさくら市を中心に宅地開発とそれに付随する住宅建築を行っている。別に関連会社として株式会社エイシン建設があり、施工部門を担当する。保育園や学校の耐震化、医院の建設など、公共的な事業にも数多く取り組んできた。
 長島社長の実家は農業だ。長男として生まれ、自分も周囲も農業を継ぐことが当然と考えていた。宇都宮農業高校に進み卒業後、その先の専攻科で2年間学んだ。「実はこのころ、私は母と一緒に農業をやろうと思っていたのです。専攻科に進んだのもそのためでした」と語る。
 父が会社を創業したのはそうしたころだった。農業をやりながらその手伝いをすることになり、将来役に立つのではないかと考えて、測量や建築設計を行う会社にも見習いとして就職した。この間、週末を利用して専門学校に通って勉強し、宅地建物取引主任者の資格を取得する。
 20歳代半ばになると、不動産取引の資格を持つ人材を求めていた宇都宮のワンルームマンションのデベロッパー会社から声がかかる。同社で分譲マンションの販売・営業・契約・管理など、すべての業務を切り盛りした。28歳で父に呼ばれてエイシンに入社することになるが、当初は宇都宮に支店をつくり、その責任者として同市内の物件を取り扱う体制を取った。この数年間、宇都宮で営業活動を行ってきた経験を踏まえてのことだ。
 忙しい毎日の中、さらに高度な資格へ挑戦する。20歳代の後半にさしかかるころに取得したのが、「公認 不動産コンサルティングマスター」の資格だった。宅地建物取引主任者の資格を持っていないと受験できないもので、土地を有効活用しようとする時に、関係者の間に入って事業推進のための各種調整作業を行う。例えば大型店舗を誘致するような場合、対象の土地は農地や借地などさまざまな所有形態があるのが一般的だ。「公認 不動産コンサルティングマスター」は、全体の事業計画を立て、これらを有効に活用するための業務を担当する。この資格を取得したことが、その後の事業展開に大きく役立つことになる。


バブル経済が崩壊、環境変化に対応

 入社3年後に父親が入院し、突然、経営の全権が長島社長の双肩にかかることになった。バブル景気が弾けた時代に当たる。「あっという間に所有不動産の資産価値が大幅に下落し、私どもも負の遺産を背負うことになり、大変な時期に引き継いでしまったものだとつくづく思いましたね」と当時の苦労を語る。
 自分がやらなければ会社が終わってしまう。従業員の生活も支えなければならない。「試練の時だと肝に銘じて新たなスタートを切りました」。転機に当たって再度確認したことが、「地域を基盤に地元の人たちに信頼される企業づくりを行う」ことだった。手広くやるよりは足元を固めようと、宇都宮での営業活動もきっぱりとやめた。
 同社は、形ある以上、家は不具合が生じるものという前提のもと、肝心な部分、例えば基礎は堅固に、梁は一寸大きな材木を使うなどの仕様を標準にしているという。さらに平成9年からは、パナソニックが考案した耐震住宅工法「テクノストラクチャー」を、さくら市では唯一採用し、在来木造住宅からさらに進化した家づくりを進めてきた。さくら市では東日本大震災での被災も多かったが、同社の物件には目立った被害は出ていない。
 また、住宅建築は車で30分圏内の施工を基本とする。施工後のメンテナンスサービスに素早く対応するためだ。さらに、年間20棟までという棟数制限を行い、丁寧な家づくりに取り組んでいる。「引き渡した後から長いお付き合いが始まる」との考え方のもと、何かあればすぐに駆けつけて修繕をする。こうした地道な積み重ねで地元での信用を築いてきた。
 その上で時代の変化に即応するために、経費削減によるスリム化はもちろん、企業体制を精査し、組織の変更や合併・分割などによる手直しを進めた。もともとが農家であるという点も信頼感を得やすく、他所から入ってくる業者に比べて有利に働いた。「不動産取引業は地元に根づき、共に歩む地場産業だと思っています。この原点を忘れないようにしたい」と思いを語る。
 本社社屋の前には現在、大型スーパーが営業している。進出しようとしていた時、大半が農地だったこの場所の開発を手がけた。ほかの大型店の進出の際にも、地元の土地所有者をまとめ上げた実績がある。さらに、氏家駅西口の多くの店舗誘致にも関わっている。しっかりした情報収集を行い、地元企業ならではのきめの細かな活動の成果だった。


地元企業として、まちづくりの一端を担う
パナソニック耐震住宅工法テクノストラクチャーを採用したモデルハウス
パナソニック耐震住宅工法テクノストラクチャーを
採用したモデルハウス

 これらの事業は人々の暮らしを変化させる。「さまざまな施設をつくることで自然に人が集まるようになります。住みやすい環境があれば、人口が増えて魅力のある街として発展していくはずです。また、新しくできたものは街全体の財産にもなります。その意味で、多少なりとも街づくりの一端が担えたのではないかと思っています」と、地元企業として社会的な役割を果たしてきたことへの自負が見える。
 さらに氏家地区では、少子化の中でも人口が増加傾向を維持しており、まだまだ可能性のある土地柄とも分析する。平成25年3月には国道293号バイパス沿いにモデルハウスをオープンさせた。パナソニックとコラボした「スマートハウス」だ。耐震性能に優れ、太陽光発電システムを導入した未来型の仕様になっている。
 厳しい経済環境のもとで、当然のことながら住宅そのものの着工件数は大きく減っている。それをカバーするものとして、今後メンテナンスやリフォームなど、既存の物件を維持管理する分野に、なお一層力を入れたいとも語る。地元の企業として、きちんとフォローをしていくことが企業存続の一番の方策と位置づける。
 現在、従業員は13人。父から事業を引き継いだ後に、自らの責任で雇用した地元の人たちだ。「この厳しい時代に、ささやかながらでも雇用を確保し、維持拡大していくことは私どもの責任だと思っています。そのためにも安定経営を目指していかなければなりません」と力を込めた。


株式会社エイシン
〒329-1311 栃木県さくら市氏家2895-2
TEL 028-682-6193 FAX 028-682-6196
URL http://www.co-eisin.com

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栃木の活性化の起爆剤に。