有限会社 サンドライ 高橋 典弘 社長


クリーニング業
経営革新重ねて近代化図る

厳しい競争にさらされる栃木県内のクリーニング業界。
有限会社サンドライは経営革新を行い、危機を乗り切ってきた。
近代化を図りながらも、常にあるのは、「お客様を大切に、社員を大切に」の心だった。


profile

昭和44年(1969年)栃木県宇都宮市生まれ。
作新学院高校を卒業後、18歳でサンドライ入社。
平成元年、20歳でクリーニング事業部兼フード事業部主任。同7年に販売企画部部長。
平成16年に36歳で代表取締役社長に就任。


わずか20歳で社の立て直しに着手
高橋 典弘社長
高橋 典弘 社長

 高橋社長は高校卒業後、昭和63年、家業のクリーニング店「サンドライ」に入社した。親の後を継ぐつもりもなく、「本当に何も考えていなかったですね」と笑う。ただ、子どものころ朝から晩まで働く両親の姿を見ていて、大変な商売であることは感じていたという。
 当時はバブルの時代にさしかかっており、仕事は忙しかった。年末や春の繁忙期には、午後10時くらいまで働くのは当たり前だった。入社後、工場の製造ラインで、洗いやプレスなどの現場仕事をこなし、ようやく慣れたころに大きな転機がやってくる。
 クリーニング業が順調な業績を上げていることを背景に、同社はラーメンや大判焼きなどを扱うフード事業にも進出していた。これが暗礁に乗り上げ、厳しい状況に陥っていた。放置しておけば共倒れになりかねない。苦労を重ねてきた母親の強い要請もあって、改革に着手する。このままでは母親の人生をだめにしてしまうという思いに突き動かされたためだ。わずか20歳の時だった。
 朝7時には出勤し、午後11時ごろまで働きづめ。工場での作業が終わった後は販売対策を練る。ポップも手書きするなど、いかにお金をかけないで集客に結び付けるかを考え続けた。「いろいろな人の話を一生懸命に聞いて、それを一つずつ実行していきました。3年間ほどがむしゃらに取り組み、何とか立て直すことができました」と当時を振り返る。
 フード部門はたたみ、クリーニング部門でも不採算店の閉鎖などの合理化を断行した。業績は劇的に回復し、大きな自信にもつながった。「人の3倍くらい働けば何でもできると思いましたね」。平成9年には本社を移転し、事業は順風満帆に進むかと思えた。その矢先、平成11年にその工場が火災で焼失してしまう。預かっていた1000点が灰になり、500人のお客様への賠償対応がのしかかった。


周囲の人々に支えられ危機を乗り切る

 振り返れば〝おごり〟があったかもしれないと分析する。当時の決算書をみれば、決して優良というわけでもなかったからだ。
 しかし、20歳代後半の若者に、そこまで思い至るゆとりはなかった。「自分の人生はこんなものだったのかと、正直、心が折れそうになりました」と思い返す。それでもある社長から、経営者が落ち込んでいては社業は進まないとアドバイスされ、無理に笑顔をつくって乗り切る毎日だった。
 こうした苦境を救ってくれたのは周囲の人々だった。機械を納入した業者は、被災から逃れた機器類を徹夜で改修してくれた。スタッフは誰もやめない。それまでのお客様も離れずに支えてくれた。「自分が人一倍がんばれば何でもできると思っていましたが、大きな勘違いでした。周りの人に支えられてこそ、可能だったのです」と〝気づき〟の時を振り返る。
 約2年間の奮闘の末、ようやく被災前までの実績まで戻すことができた。しかし、当面の危機は乗り切ったものの、業績は頭打ちの状況に入っていく。当時、栃木県内のクリーニング業界は、大手チェーン店の進出などで激しい競争にさらされていた。価格競争だけでは生き残りが難しい。付加価値が高い品質、サービスを提供することが不可欠だった。
 こうした環境を踏まえ、自社の経営革新に乗り出す。テーマとしたのは『ロット式生産システムの導入』。それまでは品物ごとに番号で管理していたものを、受付・集荷・生産・配送・引き渡しまで、お客様単位で行う方式だ。これによって無理、無駄がなくなり、預かった衣服が行方不明になるなどの事故を大幅に減らすことができた。また『朝預かり夕方仕上げ』などのサービスにも取り組んだ。
 さらに、スーパーのインショップや取次店が中心だった店舗展開から、徐々にロードサイドの直営店へと転換していく。平成19年には工場を改築するなどのハード面も整備した。この結果、経営革新の実施前に比べて、約3割の生産性の向上を実現することができた。直営店は平成23年まで1年に1店舗のペースで増やし、現在、12店舗を構えている。


出先の店舗などカメラでネットワーク化
サンドライ本社工場
サンドライ本社工場

 平成25年に入り、第二の経営革新に着手した。多店舗展開を進めるうちに、OJT(企業内教育)や店舗と本社間の連絡体制などがスムーズに運ばなくなり、お客様へのサービスにも支障が出始めたことを痛感したからだった。今回はテーマを『最新情報通信技術を活用したプロモーションの向上とオペレーション改善』に置いた。店舗を含めた社内の各部署をパソコンとネットワークカメラ・タブレット端末で結び、リアルタイムでコミュニケーションが取れるシステムを組み上げた。
 「出先の店舗はワンマンカウンターなので孤独な作業になりがちです。今回のシステム導入によって、分からないことが出ればネットワークカメラを使って解決できるようになりました。商品知識向上などの人材育成に大きな武器になります」と有効性を語る。
 受付の段階でお客様から専門的な質問を受けた場合などでも、工場と画面でやり取りしてその場で対応するため、安心感、信頼感を得ることができるようになった。運用が始まってから店舗と工場の歯車がかみ合ってきたという実感がある。今後さらに多店舗展開を進め、3年くらいで20店舗ほどにまで拡大したいという。
 このシステム導入の基礎にあるのは、何よりもコミュニケーションを大切にしたいという思いだ。従業員を大事にする『大家族主義』を掲げる。社員総会をはじめ、新人歓迎会、各種研修会、誕生会、母の日・父の日の感謝ハガキ、ハロウィン仮装大会など、事あるごとに社内イベントを展開する。時にはお客様も巻き込んでいく。
 栃木SCへの支援もその延長上にある。自分たちが洗ったユニフォームを身につけた選手たちを、家族みんなで見に行く活動も行っている。社内で自分の存在が必要とされていることが認識できれば、それがやりがいにつながり、お客様と接する際にも必ず反映されるはずとの確信がある。
 今後の展開については「今年からクリーニングした衣類を半年間お預かりするサービスを始めました。冬物を自宅に保管する必要がなくなるわけです。こうしたライフスタイルそのものを提案していく事業に積極的に取り組んでいきたい思っています」。従来のクリーニン業の枠を超えたサービスを目指す。


有限会社サンドライ
〒321-0136 栃木県宇都宮市みどり野町38-13
TEL 028-653-3635
URL http://www.sundry.co.jp/

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栃木の活性化の起爆剤に。