株式会社 リンクス 佐藤 正人 社長


会社の再生は気持ち次第(事業再生現場から)

事業再生への思い
佐藤 正人社長
佐藤 正人 社長

 勤務先であった足利銀行が国有化されたのが平成15年11月、その後半年ほどで銀行を辞め、2年間建設業者の再生を手伝ってから、平成18年9月に「事業再生コンサルティング」という地方では同業者に滅多に会わないような珍しい業種の会社を起業した。当時は小泉改革も終盤にきた頃で、景気も徐々に回復している時期であった。
 開業からは毎日が営業三昧、宇都宮ベンチャーズの家賃2万3000円がとても高く感じ、鳴らない電話を見つめながらサラリーマンを辞めたことを後悔したこともあったが、少しずつ事業再生の意味を理解し、リンクスを応援してくれる人が増え、やがてクライアントや社員も増えてきて、今は7期目を迎えている。「事業再生」という言葉も、10年前に産業再生機構がダイエーやカネボウの再生を手がけてから少しは認知されるようになってきた。
 「なぜこの仕事を始めたのか」と聞かれることがある。
 私は辞める数年前から、銀行で業績の悪化した会社の支援部門で仕事をしていたが、その当時感じたのは、債権者(銀行)サイドからの再生の限界であり、会社を再生するには、債務者(会社)サイドに立って、経営者と目線を合わせて判断や行動をしなければ「真の意味」での事業再生にならない、という思いである。
 また当時の事業再生コンサルティングは東京の会社を使うことが主流であったが、料金は驚く程で高額でとても再生を望む中小企業が負担できる金額とは言い難かった。
 そんな理由もあって、過剰債務に陥った地方の企業を救うには、「リーズナブルな価格」で「品質の良いコンサルタント会社」を作らなければならない、という青臭い正義感から会社を設立し、今でもその思いは消えていない。


中小企業の事業再生

 開業して7年、その間に我々事業再生業界や経済環境は刻々と変化している。今では全国で40万社が使っている「リスケジュール(リスケ)」も、開業した平成18年頃は、リスケを申込んで「門前払い」を受けたこともあったし、リスケという言葉をクライアントに理解させることに労力を費やした時もあった。
 その後、平成21年の中小企業金融円滑化法の制定により、銀行の対応は一転、リスケは優先して対応してもらえるようになったのだが、それでもリスケの本来の意味である返済の減額は「問題の先送り」に過ぎず、時間の経過や景気の悪化により、地方中小企業をギリギリの資金繰りへと追い込んでいる。
 平成22年頃には一時減少した中小零細企業の倒産件数も、昨年からはふたたび増加しつつあり、また資金繰りを支えてきた中小企業金融円滑化法も今年3月には期限切れとなったことで、中小零細企業のとっては今までにない厳しい局面が現われる可能性も出てきている。
 そんな背景を持ちながらも、アベノミクスの施策「株高」「円安」は日々進行している。
 「複雑な背景」と「読めない未来」、いったい何をすれば地方の中小零細企業は生き残っていけるのか。
 今年は金融関係の講演の依頼や再生の相談も増えつつあり、どうすれば会社は生き残っていけるのか、経営者自身が明確な答えを出せない時代になっている。
 「事業再生のコンサルティングって、何をするのですか」という質問を受けることがある。
 確かに想像しにくいし、部外者以外の外部からは見えない仕事なので、一言で説明することは難しい。クライアントによって仕事は様々であり、例えば金融機関向けの経営計画書作り、人事管理や財務管理のシステム構築、仕入先や販売先への支援の要請、リストラ解雇の交渉、不動産処分や会社分割や合併の手配等々、どんなことでも「再生に必要」なことは一通りやっている。
 しかしそれらは手段手法であり、本来の目的は事業の収益力を上げ、財務内容を改善し、最終的に「事業継続」ができることにある。
 リンクスは全員が銀行出身ではあるが、仕事は金融関係のことばかりでなく、なんでもこなして最終的に事業の再生や再建をすることでクライアントが「過去」から離脱することが目的である。
 例えば赤字続きの会社の黒字化や収益改善、バブル時代の遺産である不動産や投資の処理、売上以上に膨れてしまった借入金の後始末。それらの原因を解きほぐし、改善策を立案実行するために利害関係者と交渉しながら、クライアントと一緒になって事業の再生を進めている。様々な業種、規模、事例から学んだ経験を生かしながら、クライアントの再生を手助けすることで我々も成長し、時代を生き残れる「事業」を作ることが我々の日々の仕事となっている。


再生するという強い意思

 「再生できる会社に基準はあるのですか」という質問も良く受ける。
 私は決まって「関わる人の気持ち次第」と答えている。
 私財を投げ打つ覚悟や家族の決意や、赤字の解消のための役員や従業員の解雇、長年の取引先との関係解消というような心の痛みも味わわなくてはならない。銀行からの融資が途絶え借入金を債権回収業者へ売却されたとしても、また資金繰りが苦しく給与を払えなくなるような時でも「再生する」という意思を持ち続けることが最も重要な要素である。
 どんな場合でも、事業の再生は簡単ではなく、クライアント自身味わったことのない大きな「痛み」を伴うことになるが、それを乗り越える「意思の強さ」を持ち続ければ、いつか必ず再生への道順は開けてくる。経営者も人の子なので、時には心折れそうになることもあるだろう。
 でもホンダやニッサンがそうであったように、どんな企業でも経営者が諦めていたら今日はなかった。経営者、従業員、取引先やその事業に関わる人達が「事業を続けたい」「事業継続した先に必ず未来がある」、そう信じることができれば、必ずいつかは再生する。それが銀行員時代も含めて、数多くのクライアントが教えてくれた私なりの結論である。
 「為せば成る、為さねばならぬ何事も。成らぬは人の為さぬなりけり」。
 再生のプロであり尊敬する上杉鷹山の言葉は、私の座右の銘としていつも目の前のデスクに貼られている。


株式会社リンクス
〒320-0046 栃木県宇都宮市西一の沢町8-22 栃木県林業会館5F
TEL 028-634-5088 FAX 028-634-5089
URL http://www.rincs.biz/

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